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巨赤芽球性貧血

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Q1

Q1.巨赤芽球性貧血とは?

  • 巨赤芽球性貧血とは、MCVが100以上となる大球性貧血の代表的疾患で、ビタミンB12 ないし葉酸の欠乏によっておこります。骨髄検査において、正常よりも大きな赤芽球(赤血球のもとになる細胞)が認められることよりこのように名付けられました。
  • 症状としては、動、息切れ、めまい、立ちくらみといった貧血症状以外に、舌の痛み(舌炎)、味覚障害、白髪、手足のしびれなどが特徴です。
  • 貧血の程度に比して、体のだるさや疲れやすさが強いことも特徴です。
  • ビタミンB12と葉酸は、メチオニンというアミノ酸の合成、チミジン三リン酸(TTP)という核酸(DNAの原料)の合成に関与しており、欠乏するとアミノ酸、DNAの合成が障害されます。細胞分裂が盛んな造血細胞ではTTPの欠乏により細胞分裂が障害され、貧血となるばかりでなく、白血球や血小板も影響を受けます。

Q2.ビタミンB12や葉酸が欠乏する原因は?

  • ビタミンB12は、体の中で作ることができないため、食事から摂取する必要があります。その吸収には、独特の仕組みがあり、それが破綻することによってビタミンB12欠乏がおこります。

  • ビタミンB12は動物性食品、特に、魚介類に多く含まれます。魚介類以外では、牛、鶏、豚のレバーに多く含まれます。植物性食品には、海苔類を除いて、ほとんど含まれていません。

  • 食物中のビタミンB12は、胃の中でトランスコバラミン I と結合します。十二指腸で膵酵素によりトランスコバラミン I が分解され、ビタミンB12が遊離すると胃から分泌された内因子と結合します。ビタミンB12と内因子の複合体が回腸の粘膜にある受容体(ビタミンB12・内因子複合体受容体)に結合して体内に取り込まれます。腸粘膜でビタミンB12は内因子から離れ、トランスコバラミン II と結合して、血液中に分泌されます。ビタミンB12とトランスコバラミン II の複合体が細胞表面にある受容体(ビタミンB12・トランスコバラミン II 複合体受容体)と結合することにより、細胞内に取り込まれます。

  • ビタミンB12欠乏の原因は、以下の通りです。

    • 極端な菜食主義、メトホルミン内服

    • トランスコバラミン I 分解障害:慢性膵炎

    • 内因子の欠乏:胃全摘術萎縮性胃炎、抗内因子抗体

    • ビタミンB12・内因子複合体受容体障害:回腸切除、回腸炎

    • トランスコバラミン II の異常、ビタミンB12・トランスコバラミン II 複合体受容体の障害

  • 胃全摘術を受けた患者さんでは、体内の備蓄が枯渇する術後4〜5年して発症します。

  • 葉酸も体内で作ることができないため、食事から摂取する必要があります。海苔や緑黄色野菜、レバーなどの食材に多く含まれます。

  • 葉酸欠乏の原因は、以下の通りです。

    • 摂取不足:野菜嫌い

    • 需要増大:妊娠、授乳、溶血による造血

    • 吸収障害:セリアック病、吸収不良症候群、熱帯性スプルー

    • 利用障害:葉酸抗薬(メトトレキセート)

    • 代謝障害:アルコール依存症

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Q3.どのように診断しますか?

  • 身体診察で以下の所見の有無を確認します。

    • ハンター舌炎:表面がツルツルした舌ないし地割れのようなしわがある舌

    • 末梢神経障害:両側の手足末端のしびれ

    • ロンベルグ徴候:開眼では立位を保てるが、目を閉じると体が揺れて倒れそうになる。陽性であれば、亜急性連合性脊髄変性症の可能性があります。

  • 血液検査では、以下の所見の有無を確認します。

    • 大球性貧血:MCV≧100、ただし、鉄欠乏性貧血を合併している場合には、正球性貧血(80MCV<100)となります。

    • 網赤血球数減少

    • シャントビリルビン血症:総ビリルビン・間接ビリルビンの増加、LDの増加、ハプトグロビンの低下

    • 血小板数減少

    • 好中球の過分葉(6分葉以上)

    • ビタミンB12と葉酸の血中濃度を測定し、いずれかの欠乏が確認されれば、診断は確定します。

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Q4.貧血以外の合併症はどのようなものがありますか?

  • 亜急性連合性脊髄変性症:ビタミンB12欠乏によりおこります。以下の症状を呈します。

    • 左右対称の手足(特に下肢)のしびれや異常感覚

    • ロンベルグ徴候陽性

    • 脊髄性失調歩行:足を高くあげ、踵を床に打ち付けるような歩行(暗所でおこりやすい)

    • 性対麻痺:両下肢がこわばって伸びたまま曲げ伸ばしできない。(病状進行による)

  • 精神症状:抑うつ、不眠、易怒性、記銘力低下、認知機能障害など

  • 神経管閉鎖不全、二分脊椎:妊娠初期の母体における葉酸欠乏では、脳や脊髄の基となる胎児の神経管の形成障害がおこります。

  • 認知機能障害:ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏のいずれによってもおこります。

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Q5.どのように治療しますか?

  • ビタミンB12欠乏の場合には、ビタミンB12の補充を行います。吸収障害がある場合には、筋肉内注射ないし静脈内注射による治療を行いますが、内服治療も効果があります。

  • ヘモグロビン濃度 8 g/dL未満、神経症状(手足のしびれなど)、精神症状(抑うつ、認知機能障害など)、妊婦、全身倦怠感などの全身症状がある場合には、注射療法を行います。

    • メチコバール500μg、1日1回、筋肉内  注射、週1~3回、4~8週間投与し、その後は、同量のメチコバールを1~3か月に1回投与する。

    • メチコバール1回1錠、1日3回、毎食後(文献1)

  • 葉酸欠乏の場合には、葉酸の補充を行います。経口摂取ができない場合を除いて、内服治療を行います。

    • フォリアミン1回2錠、1日2回、朝夕食後

  • ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏が合併する場合、葉酸のみを補充するとビタミンB12欠乏による神経障害が顕在化ないし悪化することがあるので注意が必要です。

<文献>

  1. Blood 92; 1191-1198, 1998.

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