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先頭

骨髄異形成症候群の治療①

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Q1

Q1.リスク別の治療にはどのようなものがありますか

  • MDSをIPSS-Rに基づいて低リスクと高リスクの2つのグループに分けます。Int(中間リスク)の患者さんは病状などを考慮してどちらかになります。あるいは、IPSS-Rの旧版であるIPSSに基づいて分類することもあります。この場合は、Low(低)とInt-1(中間-1)が低リスク、Int-2(中間-2)とHigh(高)が高リスクになります。日本血液学会の造血器腫瘍治療ガイドラインの治療アルゴリズムを示します。

  • 高リスク・低リスクいずれの場合でも、貧血や血小板減少に対しては、輸血を行います。輸血については、別資料をご参照ください。

  • 低リスクで無症状であれば、経過観察となります。症状がある場合には、薬物治療を行います。貧血に対しては、エリスロポエチンという腎臓から分泌される赤血球を増やすホルモンを遺伝子工学の技術を用いて作った薬ネスプ(ダルベポエチン アルファ)の注射を行います。好中球減少に対しては、好中球を増やす顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤の注射を行います。血小板減少については薬物療法はなく、輸血をします。5番染色体長腕部欠失を伴うMDSではレブラミド(レナリドミド)の内服治療を行います。これらの治療によっても輸血を頻回に必要とする場合には、ビダーザ(アザシチジン)の注射を行うことがあります。

  • 高リスクでは、ビダーザ(アザシチジン)による治療を行います。骨髄移植などの造血幹細胞移植が可能であれば、移植という選択肢もあります。移植が可能かどうかは、患者さん個々に検討しますが、一般的には、55歳以下で合併症がなく、白血球の血液型(HLA)が合う提供者がいる方が対象となるので、限定的です。

MDSの治療アルゴリズム.png
Q2

Q2.ネスプとは、どんな薬ですか?

  • 低リスクMDSにおける貧血には、ネスプ(ダルベポエチン アルファ)の皮下注射を行います。また、鉄欠乏やビタミンB12欠乏、葉酸欠乏など貧血を起こす他の要因が合併している場合には、そちらの治療も行います。なお、安全性が確認されていないため、高リスクMDSの患者さんには投与できません。

  • ネスプ(ダルベポエチン アルファ)は、血中エリスロポエチン濃度は500mU/mL以下でヘモグロビン濃度が10g/dL以下の患者さんに投与します。基本的には、週1回、皮下注射を行いますが、患者さんの病状によっては、2週~4週に1回となることもあります。

    • ネスプ注射液240μg(120μg×2本)、皮下注射、週1回

  • 副作用としては、血圧上昇(16%)、脳梗塞(0.8%)、脳出血(0.1%)、高血圧性脳症(0.1%未満)、心筋梗塞(0.1%未満)、肺梗塞(0.1%未満)、肝機能障害(0.1%)、アレルギー反応・アナフィラキシー(頻度不明)などがおこることがあります。

  • 貧血が改善することにより血液粘稠度が上昇し、心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞のある患者さんでは、症状の悪化や新たな梗塞が誘発される可能性があります。また、高血圧症のある患者さんでは、血圧上昇による脳障害(高血圧性脳症)が現れることがあります。

  • これらの副作用の発症を未然に防ぐため、投与開始後、しばらくの間は、週1回から2週に1回の血液検査が必要です。

  • ヘモグロビン濃度が11g/dLを超えたら減量ないし休薬します。

Q3

Q3.G-CSF製剤とは、どんな薬ですか?

  • 低リスクMDSにおける好中球減少症には、G-CSF(粒球コロニー刺激因子)製剤の点滴静注を行います。G-CSFは好中球を増やす作用のある物質です。

  • グラン、ノイトロジンの2種類があり、グランの後発品としてフィルグラスチムがあります。

  • 芽球の増加を伴う病型では急性骨髄性白血病への進展を促進する可能性があるため、使用できません。

  • G-CSF製剤は、好中球数が1,000/μL未満のときに、1日1回投与します。基本的には、好中球数が5,000/μL以上に増加するまで毎日投与します。

    • グラン(フィルグラスチム)100μg/m (体表面積当たり100μg:150~200μg)+生理食塩液100mL、点滴静注30分、1日1回

    • ノイトロジン5μg/kg(体重当たり5μg:200~400μg)+生理食塩液100mL、 点滴静注30分、1日1回

  • 副作用としては、間質性肺炎(頻度不明)、急性呼吸窮迫症候群[i](頻度不明)、芽球の増加(頻度不明)、毛細血管漏出症候群[ii](0.1%未満)、大型血管炎(頻度不明)、腫・破裂(頻度不明)、アレルギー反応・アナフィラキシー(頻度不明)、肝機能障害(1~5%)、頭痛(1%未満)、関節痛・筋肉痛(1%未満)、皮疹(1%未満)などがおこることがあります。

[i] 急速に進行する呼吸困難、低酸素血症、両側性びまん性肺浸潤影を呈する病態

[ii] 低血圧、低アルブミン血症、浮腫、肺水腫、胸水、腹水などを呈する病態

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