さがみひまわり健康大学
骨髄異形成症候群
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Q1.どのような病気ですか?
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骨髄異形成症候群は、英語の頭文字をとってMDSとよばれます。MDSは血液の作られ方に異常により血球減少をきたす慢性進行性の疾患です。進行すると輸血が必要となり、患者さんの約30%は急性骨髄性白血病に進展します。
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健康診断や生活習慣病などの定期検査で気づかれることが多く、初期はほとんど無症状です。
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MDSを疑う血液の所見としては、MCVが100以上になる貧血(大球性貧血)です。そのほか、好中球数減少や血小板数減少が認められることがあります。
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白血球数や白血球分画(血液像)に異常を認めることがあります。白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5種類の細胞があり、その構成比率を白血球分画といいます。健常成人では、好中球が約60%、次いでリンパ球が約30%を占め、常に好中球%がリンパ球%より大きくなっています。好中球%がリンパ球%を下回る状態(好中球とリンパ球の比率の逆転)は、異常と考えられます。白血球数が減少している場合(3,500未満)はもちろんのこと、正常範囲内にあっても好中球・リンパ球比率の逆転があれば、MDSの可能性を考えます。
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診断には骨髄検査が必要です。骨髄の造血細胞数は血液検査とは逆に正常ないし増加しています。このような状態を無効造血とよびます。造血細胞から血液細胞が作られる途中で細胞が壊れ、血液細胞が減っていくと考えられています。
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骨髄検査で形のいびつな造血細胞や造血細胞の染色体異常が認められます。
Q2.どのように診断しますか?
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血液検査でMDS以外の疾患でないことを確認し、骨髄検査で特徴的な所見が認められれば、MDSと診断します。
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大球性貧血をきたす疾患には、MDS以外に、ビタミンB12欠乏ないし葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、慢性肝障害による貧血、甲状腺機能低下症による貧血などがあります。また、これらの貧血に鉄欠乏性貧血が合併していることもあります。全例ではありませんがMDSでWT-1 mRNA値が増加することがあります。標準的な検査項目は以下の通りです。患者さんの病状により内容は変わります。
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血算、白血球分画、網赤血球数
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WT-1 mRNA定量
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溶血検査:間接ビリルビン、LD
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肝機能検査:AST、ALT、γ-GTP、ALP
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ビタミンB12、葉酸
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甲状腺機能:TSH、FT3、FT4
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血清鉄、TIBC、フェリチン
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血液検査でMDSを疑う場合には、骨髄検査を行います。通常は、骨髄穿刺と骨髄生検を行います。別資料『骨髄検査』をご覧ください。標準的な検査項目は以下の通りです。患者さんの病状により内容は変わります。
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骨髄像:骨髄細胞数の計測
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骨髄細胞の形態観察
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特殊染色(ペルオキシダーゼ染色、鉄染色)による異常の確認
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染色体検査
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病理検査
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Q3.MDSにはどのような種類がありますか?
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MDSは単一の疾患ではありません。いくつかの病型に分類されます。血液所見、骨髄所見により病型を決めます。病型は固定的なものではなく、経過とともに変化することがあります。
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基本的には、WHO分類で病型を決めます。MDSの治療薬であるビダーザの効果をみる臨床試験は、FAB分類に基づいて診断された患者に対して行われているため、FAB分類も用いられます。
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MDS-SLD, -MLD, -RSでは、芽球が5%未満です。MDS-EBは5~19%で、5~9%をEB-1、10~19%をEB-2と細分類します。
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5番染色体長腕部の単独欠失を伴うMDSも芽球は5%未満です。レブラミドという薬が有効な唯一の病型です。
Q4.病型の違いで治療はかわりますか?
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MDSの治療は病型の違いというよりもリスク分類に基づいて行います。リスク分類とは、平均してどれくらい生きられるか(生存期間)、急性白血病への進展の危険性についてのグループ分けのことです。IPSS-R分類を用い、染色体異常、骨髄中の芽球の割合、ヘモグロビン濃度、血小板数、好中球数を点数化して、5段階に分類します。詳しくは、別資料『骨髄異形成症候群のリスク分類』をご覧ください。
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いずれの病型についても、貧血や血小板減少に対しては輸血を行います。
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リスク分類により、経過観察のみでよい場合、ビダーザで治療する場合があります。5番染色体長腕部の単独欠失を伴うMDSでは、レブラミドで治療します。これらの治療を行っても完治することは難しいです。
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完治を目指す治療法としては、同種骨髄移植などの造血細胞移植があります。年齢や合併症、提供者の有無などを考慮して、実施可能かどうかを検討します。