さがみひまわり健康大学
鉄欠乏性貧血:原因と症状、診断
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Q1.鉄欠乏性貧血の治療にはどのようなものがありますか?
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基本は鉄の補充です。鉄剤の内服、注射、食事療法があります。
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まず、内服治療を行います。経口鉄剤に副作用がある方や高度な貧血の方は、注射を行います。
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食事療法は、鉄欠乏を防いで貧血になりにくくするために行います。食習慣をつけるため、薬物治療中にも行っていきます。貧血が改善した後も継続することが重要です。
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これらの治療と並行して出血の原因を調べ、可能な限り原因に対する治療を行います。
Q2.鉄剤の内服治療は具体的にどうしますか?
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経口鉄剤には、徐放剤・非徐放剤の2種類があります。以下のいずれかを処方します。吸収を良くし副作用を抑えるためにビタミンCを併用することもあります。
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フェロ・グラデュメット1日1錠、1日1回、就寝前
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フェロミア1回1錠、1日2回、朝・夕食後
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フェロミア顆粒1回0.6g、1日2回、朝・夕食後
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リオナ1回2錠、1日1回、朝食直後
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錠剤で副作用が出る方には、インクレミンシロップ少量療法を行います。1日2mLを食べ物に混ぜて服用します。徐々に量を増やしていきます。
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インクレミン2mL、1日1回、随時
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1~2か月に1回血液検査をして貧血や鉄の状態、副作用の有無を確認します。貧血が改善したら、中止するタイミングを検討します。フェリチン値が25ng/mL以上、鉄飽和度が20%以上になれば、中止が可能です。ただし、生理のある女性では、中止により貧血が再燃しやすいので、治療を継続することがあります。
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副作用は、主に悪心・嘔吐、胃部不快感、下痢、便秘、発疹・掻痒感、肝機能障害(AST、ALTなどの増加)などです。胃腸病のある方は症状が悪化することがあります。
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薬物相互作用:甲状腺ホルモン薬、抗菌薬(ニューキノロン系、テトラサイクリン系)、制酸剤とは飲み合わせが悪いので注意が必要です。
Q3.鉄剤の注射治療は具体的にどうしますか?
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経口鉄剤の副作用で内服困難な方や高度な貧血の方に注射療法を行います。
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注射療法の注意点は、鉄を過剰に投与しないことです。鉄過剰になると心臓や肝臓など重要臓器に鉄が沈着し、臓器障害をおこします。注射療法では、鉄過剰になりやすいので、 1か月に1回血液検査を行って貧血や鉄の状態、副作用の有無を確認します。
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必要鉄量(mg)を以下の式で計算します。
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[2.2×(16―ヘモグロビン値)+10]×体重
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1回当たり、鉄として40~120mgを点滴で注射します。最初は40mgを点滴し、副作用の有無を確認します。2回目から増量していきます。
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フェジン40~120mg+10%ブドウ糖液100mL、点滴静注、30分
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体重50kg、ヘモグロビン値8.0mg/dLとすると、必要鉄量は1,380mgとなるので、概ね12回の点滴が必要です。週1回で約3か月通院して頂くことになります。
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3回の注射で治療が終わる薬もあります。
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フェインジェクト500mg+生理食塩液100mL、点滴静注30分、週1回
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副作用は、頭痛、悪心・嘔吐、発熱・熱感、発疹、肝機能障害(AST、ALTなどの増加)などです。
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重大な副作用として、非常にまれにショック症状(脈拍異常、血圧低下、呼吸困難など)、長期投与により骨軟化症(骨痛、関節痛などを伴う)がおこることがあります。
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注射部位の炎症や色素沈着をおこすことがあります。
Q4.食事療法は具体的にどうしますか?
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鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、吸収効率はそれぞれ、50%と15%です。ヘム鉄は主に肉や魚といった動物性食品に含まれています。植物性食品やサプリに含まれる鉄は非ヘム鉄です。
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1日3食、栄養素をバランスよくとりましょう。特に、たんぱく質は血液を作るのに必要な栄養素なので多くとります。ただし、糖質(米飯、パン、麺類)が不足すると摂取したたんぱく質はエネルギーとして消費されるので、糖質もしっかりとります。
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鉄分の豊富な食品を食べましょう。ヘム鉄を含む肉類(レバー、牛・豚・鶏肉)、魚介類(あさり、マグロ、カツオ、イワシ)。非ヘム鉄を含む大豆製品(がんもどき、納豆、 豆腐)、あずき、エンドウ豆、ライ麦パン、赤こんにゃく、小松菜、ほうれん草、切り 干し大根、ひじき、ココア、卵。
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鉄の吸収をよくするビタミンCや造血に必要なビタミンB12、葉酸が豊富な食品を食べ ましょう。
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緑茶、紅茶、コーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を低下させるので食事中や食事の 直前・直後に飲むのは避けた方がよいでしょう。
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1日の推奨摂取量:男性では、思春期で10mg成人以降は7.5mgです。女性では、思春期で月経がない場合7.0~8.5mg、月経がある場合10.5~12mg、成人以降は月経がない場合6.5mg、月経がある場合10.5mgです。
『食事療法:鉄欠乏性貧血』のサイトも閲覧する。