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鉄欠乏性貧血:鉄の体内分布

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Q1

Q1.鉄の吸収・排はどうなっていますか?

  • 鉄にはFe   、Fe   、ヘム鉄の3種類があります。植物性食品やサプリメント、鉄剤に含まれる鉄は、主にFe   です。Fe   は直接吸収することができず、胃や十二指腸で胃酸やアスコルビン酸(ビタミンC)などの作用を受けてFe   に変えられ、主に十二指腸で吸収されます。肉や魚といった動物性食品はヘム鉄を含んでいます。ヘム鉄は、そのまま十二指腸で吸収されます。ヘム鉄の吸収効率は50%、非ヘム鉄(Fe 、Fe )は15%です。ヘム鉄の方が、非ヘム鉄より約3倍効率よく吸収されます。

  • 腸粘膜の細胞に取り込まれた鉄は、鉄が不足している場合には、細胞から出てトランスフェリンと結合し、血液を介して主に骨髄に運ばれていきます。鉄が充足している場合には、細胞から出ることができず、細胞内でフェリチンとなって貯蔵されます。腸粘膜細胞は、約2日すると剥がれ落ちて便として排泄されますので、細胞内の鉄も細胞とともに体外に出ていきます。排出ルートの大部分は消化管粘膜の剥落ですが、皮膚や尿路粘膜の剥落もあります。

  • 健常人では、1日約1mgの鉄が体外に排出され、約1mgが吸収されます。

  • 100mL出血すると40mg鉄が失われます。月経血量は平均37mLとされ、17mgの鉄が毎月失われています。[1]

[1] 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」報告書 ミネラル(微量ミネラル)

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ワンポイント医学知識

ヘプシジンという肝臓で作られるホルモンが腸粘膜細胞から鉄を出すか出さないかを決めています。ヘプシジンは肝細胞内の貯蔵鉄が増えると分泌が増し、減ると分泌が減ります。 腸粘膜細胞には、フェロポーチンとよばれる門があり、ヘプシジンがないとき、門は開いていて鉄が出ていき、体内に取り込まれます。ヘプシジンが来ると門を閉め(正確には分解し)て鉄を外に出さないようにし、体内に取り込まないようにします。

Q2.鉄は体内でどのような働きをしていますか?

  • 体内の鉄の総量は男女で異なり、男性は4g、女性は3gです。その70%が赤血球のヘモグロビンに結合しています。20%は貯蔵鉄として肝臓や臓、骨髄などに存在し、10%は筋肉のミオグロビンに結合しています。それ以外に数%は組織鉄として細胞内のシトクロームなどの酵素に結合したり、血清鉄として血液中のトランスフェリンと結合したりしています。

  • 肺で取り込まれた酸素は赤血球のヘモグロビンのヘム鉄と結合して末梢組織に運ばれていきます。組織に放出された酸素は細胞内に入り、ミトコンドリアの電子伝達系で還元されて水となりますが、このとき、ATPというエネルギーを蓄えた物質が作られます。細胞はATPを利用して様々な機能を発揮します。ATPは細胞の生存にとって不可欠な物質です。その他、細胞内の酵素に結合して、様々な反応に利用されます。

Q2
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Q3

Q3.鉄は体内での動きはどうなっていますか?

  • 十二指腸から吸収された鉄はトランスフェリンと結合し、血液中を流れていきます。骨髄で鉄は、赤血球を作る元になる細胞である赤芽球に取り込まれ、ヘモグロビンのヘムに組み込まれます。赤芽球は核をもった細胞ですが、核が抜け出て赤血球となり、血液中に出ていきます。

  • 血液中に出た第1日目の赤血球は網赤血球とよばれ、特殊な染色法で染めると赤血球と区別することができます。

  • 赤血球の寿命は約120日です。寿命を迎えた赤血球は臓のマクロファージに捕捉され、食べられてしまいます(貪食)。マクロファージの細胞内で赤血球は分解され、ヘモグロビンはヘムとグロビンになります。ヘムは、鉄とポルフィリン環に分解され、ポルフィリン環は代謝されて間接ビリルビンとなって血液中に放出されます。間接ビリルビンは肝臓に取り込まれ、解毒作用を受けて直接ビリルビンとなり胆汁中に排出されます。鉄は貯蔵鉄が十分あるときにはマクロファージに貯蔵され、貯蔵鉄が不足しているときには、マクロファージから血液中に放出され、トランスフェリンと結合して、主に骨髄に運ばれ、再利用されます。たんぱく質であるグロビンはアミノ酸に分解され、再利用されます。

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