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貧血の検査

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Q1.貧血の検査

Q1.貧血の検査にはどのようなものがありますか?

  • 貧血があるかないかを調べる検査としては、血球数を測定します。血算とかCBCとよんでいます。赤血球数、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)、MCV、MCH、MCHC、網赤血球数、白血球数、白血球分画、血小板数を測定します。(MCH、MCHCの説明は割愛)

  • 赤血球数、白血球数、血小板数は血液1µL当たりの各血球の個数を表します。

  • ヘモグロビンとは、赤血球の中にあって酸素と結合する物質です。中に鉄を含んでい   ます。

  • ヘマトクリットとは、血液に占める赤血球の体積の割合を表します。ヘマトクリットが45%というのは、100mLの血液のうち、45mLを赤血球が占めているということです。

  • MCVは、赤血球1個の大きさです。貧血の原因を探る手掛かりとなります。

  • 網赤血球は、出来立てのホヤホヤの赤血球で、骨髄の赤血球を作る機能を反映します。

  • 白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5つの種類があります。白血球分画とは、それぞれの血球が何%を占めているかを表します。貧血を診断するときも、白血球数や白血球分画、血小板数に異常がないか確認することが必要です。

  • 鉄に関係する項目として、血清鉄、総鉄結合能、不飽和鉄結合能、フェリチン、鉄飽和度があります。

    •  総鉄結合能とは、鉄を運ぶたんぱく質(トランスフェリン)の量を表します。鉄欠乏により増加します。不飽和鉄結合能は、総鉄結合能から血清鉄を引いた値なので、総鉄結合能か不飽和鉄結合能のどちらかを測定すれば十分です。鉄飽和度とは、血清鉄を総鉄結合能で割って100倍した値です。鉄剤を飲んでいると血清鉄が増えてきますが、十分増えたかどうかは、鉄飽和度で判断します。

    • 血清鉄は、トランスフェリンに結合した血液中の鉄の量です。鉄欠乏で減少しますが、慢性炎症のような病気でも減少します。

    • フェリチンは、体内に貯蔵された鉄分の総量を反映しています。鉄欠乏で減少し、 慢性炎症や再生不良性貧血のような赤血球が作れない病気で増加します。

  • 溶血に関係する項目として、LD、間接ビリルビン、ハプトグロビン、尿中ヘモグロビン、直接クームス試験、寒冷凝集反応があります。

    • LDは赤血球などの細胞内にある酵素です。溶血がおこると血中に放出されるため、増加します。

    • ビリルビンとは、ヘモグロビンが分解されたもので、まず間接ビリルビンになり、 肝臓で直接ビリルビンになります。溶血では間接が、肝臓や胆嚢の病気では直接が 増加します。

    • 溶血によりヘモグロビンが血中に出てくるとハプトグロビンというたんぱくが結合し、肝臓に運んでいきます。溶血ではハプトグロビンが消費されて減少します。一部は尿中に排されため、尿中ヘモグロビンが陽性となります。

    • 直接クームス試験は赤血球を破壊するIgGという種類の抗体の有無を調べる検査です。

    • 寒冷凝集反応は赤血球に結合して赤血球どうし塊を作ったり破壊したりするIgMと いう種類の抗体の有無を調べる検査です。

    • 発作性夜間血色素尿症は、赤血球膜のCD55、CD59とよばれるたんぱくが欠損することにより、溶血がおこりやすくなる病気です。

ヘモグロビン代謝.jpg
  • 大球性貧血では、ビタミンB12、葉酸を調べます。

    • ビタミンB12は胃から分泌される内因子と結合することにより回腸から吸収されます。胃全摘をしている方、慢性胃炎の方では内因子が枯渇するためにビタミンB12の吸収量が減って、血中濃度が低下します。

    • 葉酸は生野菜に多く含まれるビタミンの一種です。摂取不足や吸収不良により血中濃度が低下します。葉酸欠乏は貧血のみならず、認知機能障害をもたらします。

  • EPO、エリスロポエチンは、腎臓から分泌される赤血球を増やすホルモンです。慢性腎不全では分泌量が減り、貧血となります。

  • その他、甲状腺機能低下による貧血が疑われる場合には、甲状腺機能の検査(TSH、FT3、FT4)、栄養障害による貧血が疑われる場合には、亜鉛の血中濃度を測定します。

  • WT-1 mRNA定量は、骨髄異形成症候群や急性白血病で増加することがあります。これらの病気を診断するときや経過を見るときに測定します。

  • 骨髄検査:血液細胞は骨髄で作られます。骨髄の働きが低下している場合や血液検査で原因が特定できない場合に行います。

    • 骨髄検査が必要な貧血:再生不良性貧血、急性白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群など。

    • 骨髄細胞の数を数えたり、染色体検査を行います。急性白血病や多発性骨髄腫と  いった血液悪性腫瘍では、腫瘍細胞の性質を調べる検査として細胞表面抗原解析を行います。

    • 骨髄検査には、骨髄穿刺骨髄生検があります。骨髄穿刺は、骨髄に針を刺して注射器で骨髄血を吸って取る検査で、骨髄細胞を観察して診断する細胞診です。骨髄生検は、骨髄に針を刺してくりぬいて取る検査で、骨髄組織を観察して診断する組織診です。

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