さがみひまわり健康大学
貧血の原因
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Q1.貧血の原因にはどのようなものがありますか?
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貧血の原因の主なものは表の通りです。
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まず、MCVに着目します。小球性、正球性、大球性のいずれに該当するかを判断しますが、原因が複数ある場合には、この表にはあてはまりません。
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小球性貧血の代表は、鉄欠乏性貧血です。貧血の中で最も多い原因です。がんや関節リウマチなど慢性疾患に伴う貧血は、そのような病気がある場合に診断されますが、他に原因がないか調べた上で診断します。サラセミアは、別名地中海貧血ともよばれる遺伝性の貧血です。日本人には少ないですが、地中海沿岸地域や中国、東南アジア、中東といった地域に多い病気です。海外からの移住者が増えた影響で、日本でも診る機会が増えています。鉄芽球性貧血は、赤血球に鉄が貯まって血液が作れなくなる病気です。先天性と後天性があり、薬の副作用でなることがあります。大球性の場合もあります。
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正球性貧血には、急性出血による貧血、血液を作る機能の障害(造血障害)による貧血、赤血球の破壊(溶血)による貧血の3つのタイプがあります。急性出血による貧血は、その名の通り、短時間に大量の血液が体外に出てしまうことにより起こります。造血障害による貧血は、全ての血液細胞が作れなくなる再生不良性貧血、赤血球だけが作れなくなる赤芽球癆、腎臓から分泌される赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)が不足する腎性貧血、急性白血病や多発性骨髄腫など異常細胞が骨髄を占拠して血液が作れなくなる貧血などがあります。溶血による貧血は、赤血球を壊す抗体ができてしまう自己免疫性溶血性貧血や生まれつき赤血球に異常がある遺伝性球状赤血球症、後天的に赤血球に異常を生じる発作性夜間血色素尿症などがあります。
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大球性貧血には、胃を全摘した人におこるビタミンB12欠乏性巨赤芽球性貧血、主に葉もの野菜の摂取不足による葉酸欠乏性巨赤芽球性貧血、栄養障害に伴って起こってくる銅欠乏性貧血、血液細胞の異常によりうまく血液が作れなくなる骨髄異形成症候群、アルコールの大量摂取によって起こる慢性肝障害に伴う貧血などがあります。
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薬を内服している方は、薬によって起こる貧血(薬剤性貧血)を常に考えなければなりません。いろいろ検査しても原因がわからない場合には、薬剤性貧血の可能性が高いといえます。
Q2.貧血の原因を突き止めるにはどのような検査をしますか?
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下のフローチャートに沿って検査をしていきます。
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総鉄結合能とは、鉄を運ぶたんぱく質(トランスフェリン)の量を表します。血清鉄はトランスフェリンに結合した血液中の鉄の量です。フェリチンは体内に貯蔵されている鉄分の量を反映します。
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網赤血球とは出来立てのホヤホヤの赤血球で、これが増えることは赤血球が盛んに作られていることを意味します。網赤血球が増加していれば、血液を作る工程は問題ないと判断でき、逆に貧血があるのに増加していなければ、血液を作る工程に問題があると判断します。
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溶血所見とは、赤血球が破壊されたことを示す所見で、間接ビリルビン増加、LD増加、ハプトグロビン減少を指します。直接クームス試験は赤血球を破壊する抗体の有無を調べる検査です。発作性夜間血色素尿症など溶血性貧血の一部では、尿中ヘモグロビンを測定することがあります。
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EPOとは、エリスロポエチンのことで、慢性腎不全では分泌量が減ってしまいます。
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骨髄検査は、血液を作る工程に問題や血液検査では原因が特定できない場合などに行います。
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その他、炎症反応の指標となるC反応性たんぱく(CRP)、腎臓機能(BUN、クレアチニン)、甲状腺機能(TSH、FT3、FT4)、肝機能(AST, ALT, γ-GTP, ALP, LD)、ビタミンB12、葉酸などを測定します。