さがみひまわり健康大学
食中毒
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Q1.食中毒の原因にはどのようなものがありますか?
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食中毒とは、食品、調理器具、包装容器に含まれたり付着したりした微生物、自然毒、化学物質などによって引き起こされる急性の健康被害で、食物アレルギー以外のものをいいます。
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食中毒の原因には、細菌、ウイルス、寄生虫、自然毒、化学物質などがあります。
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細菌による食中毒は、感染型と毒素型に分類されます。感染型は、腸内で菌の増殖が必要で、感染侵入型と生体内毒素型に分類されます。感染侵入型は、原因菌が食品とともに摂取された後、腸内で菌が増えて粘膜に侵入して腸炎をおこします。生体内毒素型は、腸内で増えた菌から毒素が産生され、その毒素が症状をおこします。毒素型は、食品中で細菌が増え、産生された毒素を食品とともに摂取することにより症状をおこします。腸内での菌の増殖は必要ありません。
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感染型食中毒やノロウイルスでは、汚染された食材を調理した際に使ったまな板や包丁などに菌が付着して、野菜など生で食べる食材が汚染されること(二次汚染)により食中毒をおこすことがあります。
Q2.原因による症状や特徴の違いはありますか?
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サルモネラ菌:鶏、豚、牛などの動物の腸管や河川、下水など自然界に広く分布し、生ないし加熱不十分な卵・肉・魚などの摂取が原因となります。食後6~72時間で腹痛、下痢、嘔吐、発熱(38~40℃)をおこします。
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カンピロバクター:家畜、家禽、ペット、野生動物、野鳥などの腸内に分布し、生ないし加熱不十分な肉(特に鶏肉)や飲料水、野菜などの摂取が原因となります。ペットからの感染もあります。潜伏期間は2~7日と長く、腹痛、下痢、発熱(37~38℃)、吐き気、筋肉痛をおこします。便は水様で、粘液や血液が混じることがあります。発症後2週前後で、手足のしびれや痛み、脱力を呈するギラン・バレー症候群をおこすことがまれにあります。
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腸炎ビブリオ:海水中に広く分布し、魚介類に付着します。寿司や刺身の摂取が原因となります。食後3~24時間で激しい腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐をおこします。
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腸管出血性大腸菌:ヒトや動物の腸管に存在します。生ないし加熱不十分な肉(特に牛肉)の摂取が原因となりますが、井戸水などの汚染により野菜が原因となることもあります。O157などのベロ毒素を産生する大腸菌が出血性大腸炎をおこします。潜伏期間は3~8日で、激しい腹痛、水様便をおこし、その1~2日後から血性下痢(下血)が現われます。溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発することがあります。HUSは、下痢が始まってから約1週間後に、赤血球の破壊による貧血(溶血性貧血)、血小板減少、急性腎不全、意識障害やけいれんなどの症状が現れ、重症の場合は死亡します。
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ウェルシュ菌:ヒトや動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く分布します。熱に強い芽胞を産生するため、加熱調理しても死滅しません。食品の温度が下がると発芽して菌が急速に増えます。ウエルシュ菌に汚染された食品、特にカレー、シチューなどの煮込み料理の摂取が原因となります。摂取後、小腸内で増殖して、毒素(エンテロトキシン)が産生され、症状をおこします。食後6~18時間で腹痛、下痢をおこしますが、発熱や嘔吐はほとんどありません。
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セレウス菌:土壌、水など自然界に広く分布し、穀類やその加工品(焼飯類、米飯類、麺類等)、調理食品(弁当類等、調理パン)の摂取が原因となります。熱に強い芽胞を産生するため、加熱調理した食品でも原因となります。下痢型と嘔吐型があります。下痢型は、小腸で産生された毒素により発症するため、食後8~16時間で腹痛や下痢がおこります。弁当やプリンなどが原因となります。嘔吐型は食品中で産生された毒素により発症するため、食後30分~6時間で吐き気や嘔吐がおこります。炒飯、ピラフ、焼きそば、スパゲッティーなどが原因となります。
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黄色ブドウ球菌:ヒトを含め動物の皮膚や腸管など自然界に広く分布します。傷やニキビなど化膿をおこす菌でもあります。寿司、おにぎりのように人が手作業をして作った食品が原因となります。食品中で毒素(エンテロトキシン)を産生し、それを摂取することが原因となります。エンテロトキシンは耐熱性なので、食べる前に加熱しても無毒化できません。食後30分~6時間で、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢がおこります。発熱はありません。
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ボツリヌス菌:土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布しています。熱に強い芽胞を産生します。食品中でボツリヌス菌が増えたときに産生されるボツリヌス毒素を食品とともに摂取することが原因となります。ビン詰、缶詰、レトルト食品、保存食品(特に自家製のもの)が原因となります。食後8~36時間で、吐き気、嘔吐や視力障害、言語障害、嚥下困難などの神経症状が現れるのが特徴で、重症例では呼吸麻痺により死亡します。1歳未満の乳児が、芽胞を摂取すると腸管内で菌が増殖し、産生された毒素が吸収されて症状をおこします。蜂蜜が原因となります。
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ノロウイルス:ヒトの腸内でのみ増殖し、便とともに排泄され、水や食品を汚染して再びヒトに入って胃腸炎をおこします。生あるいは加熱不十分なカキなどの二枚貝の摂取が原因となります。感染者の便や吐物に触れたり、その飛沫によって二次感染をおこすこともあります。食後1~2日で吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、発熱をおこします。
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A型肝炎ウイルス:汚染された食品(主にカキなどの二枚貝)や水を摂取して感染し、急性肝炎をおこします。感染後2~7週間(平均4週間)の潜伏期間を経て、38℃以上の発熱、全身倦怠感、吐き気、嘔吐、食欲不振、黄疸、肝腫大などを発症します。
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E型肝炎ウイルス:生あるいは加熱不十分の豚、猪、鹿などの肉や内臓を摂取して感染し、急性肝炎をおこします。感染後3~8週間(平均6週間)の潜伏期間を経て、発熱、吐き気、腹痛、黄疸、肝腫大などの症状が出ます。特に妊婦では劇症化しやすいため、注意が必要です。
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アニサキス:魚の内臓や筋肉に寄生する体長2cm程度の寄生虫で、生あるいは加熱不十分なサバ、サケ、ニシン、イカなど魚介類を摂取することが原因となります。アニサキスが胃や腸壁に侵入することにより激しい腹痛をおこします。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。潜伏期間は数時間から十数時間です。
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クドア:ヒラメの筋肉内に寄生する10μm程の寄生虫で、生のヒラメの摂取が原因となります。食後数時間で吐き気、嘔吐、下痢を起こします。
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シガテラ:熱帯、亜熱帯の海洋に生息するプランクトン(渦鞭毛藻)が産生する毒素(シガトキシン)に汚染されたバラフエダイ、ウツボ、カマス、イシガキダイ、ヒラマサなどの魚介類を摂取することが原因となります。食後1~8時間程度で下痢、嘔吐、関節痛、倦怠感などがおこります。最も特徴的な症状は、温度感覚の異常で、水に手を入れるとドライアイスに触れたときのように、また温かいものに触れると冷たいものに触れたときのように感じます(ドライアイス・センセーション)。
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貝毒:二枚貝(ホタテガイ、アサリ、カキなど)やホヤ、カメノテ、フジツボなどが毒素をもった植物プランクトンを餌として食べることによって、体内に毒を蓄積させる現象です。麻痺性貝毒と下痢性貝毒があります。麻痺性貝毒では、食後30分程で舌、唇、顔面がしびれてきます。その後、全身に広がり、重症の場合には、呼吸困難になって死亡します。下痢性貝毒では、食後30分~4時間以内に下痢、吐き気、嘔吐、腹痛がおこります。発熱はありません。
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ヒスタミン:食品中に含まれるヒスチジン(アミノ酸の1種)にヒスタミン産生菌の酵素が作用してヒスタミンが生成されます。ヒスチジンを多く含む食品を常温に放置するなどしてヒスタミンが蓄積された食品を摂取することにより発症します。ブリ、イワシ、シイラ、サンマ、サバ、アジなどの赤身魚とその加工品が原因となります。食べた直後から1時間以内に、顔面、特に口の周りや耳たぶが紅潮し、頭痛、じんましん、嘔吐、下痢などが現われます。ヒスタミンは熱に安定なため、加熱調理しても解毒できません。